「どうしてこんなことをするのだろう。おこ!」と思うことがあり、悲しい記憶が呼び起こされたので記録しておく。
歯科で働いてたときこういうことは確かにあったけど、真剣に働いてるからそうなってしまったのであって、こうしてふざけて話題にされるのは心底悲しくて嫌だった。
— えりか (@ericca_u) 2016年5月18日
拝啓、歯医者さん。顔に当たるおっぱいはタオルだったのですか? https://t.co/MM99uyL2UO
男の人の中で勝手に「エロいことにしてOK!」ってことにしてる女の職業があって、「その職業に就いたってことはエロい話題にしていいよね★」ってことにされて、拡散しやすいから?ってゲス媒体ゲス雑誌でもないところでこんな記事にされてしまうんだなーーー。おこ。
— えりか (@ericca_u) 2016年5月18日
わたしは男の人の「エロいってことにしたいぜ!」という気持ちがわからないからおこなんじゃなくて、普段真面目にエロの仕事もしてるからおこ。エロはエロのフィールドで真剣にやってほしい。
— えりか (@ericca_u) 2016年5月18日
ツイートにも書いたように、私は以前歯科で働いていた。
新しい職場への緊張や、色々なことが上手にできる同期を見ての焦りがあった。自分で思い出しても、仕事には本当に真面目に真剣に取り組んでいたと思う。歯の治療中、衛生士の持つバキュームが上手く当たらず、水が溜まったり舌やほっぺたを吸われたりしたことがある人も多いと思う。それで医師が衛生士や助手を叱っている場面に出くわすこともあると思う。私は、そんなことで患者さんに不快な思いをさせ「歯科って行きたくないな」と思わせてしまいたくなく、必死だった。ただでさえ嫌な歯科治療。だからこそ少しでもスムーズに治療時間を終えられることが、医師にとっても患者さんにとっても良いことだと考えていた。
1人1人千差万別な口腔内をよく観察しようとすれば、前のめりになることがある。
「あ、この体勢だと、もしかしたら今までも胸が当たってしまっていたかも……。」と気が付くことができたのは、就職してしばらくして、少し心の余裕ができた頃だった。不快を取り除くために、と思っていたのに、胸が当たることで不快に思った患者さんもいただろう。そう気付いて、とても落ち込んだのを覚えている。
そして、その少しの心の余裕ができた頃になると、やっと友達との飲み会にも参加できるようになった。根を詰めて働いていたところから暫し解放されて、楽しい時間を過ごせるといいなと居酒屋に向かった。近況報告の話が進んで、私に発せられたのはこんなセリフだった。
「やっぱり、好みの患者さんが来たらおっぱい当てたりするの?笑」
こんなこと、働いている人に直接言ってしまういい大人が本当にいるんだ、というショック。そして、真剣に働いていることを茶化された深い深い悲しみ。その日はお酒に酔うことなく家に帰り、悔しくて悲しくて泣いた。
私は、「性的接触の前提がない場所で、思いがけず性的に受け取れる接触があったら嬉しいよね」という気持ちがわからないつもりはない。仕事として、エッチな媒体にそういう記事を書くこともあるし、そういうアダルトビデオの紹介を担当することもある。だからこそ、今回のように、媒体を吟味せずエッチな記事を配信してしまったことは、残念だと思っている。
下記のようなツイートもそうだ。
ツイッターにいらっしゃる歯科医および歯科助手の皆様にアンケートというか質問です。施術(治療)中、患者の頭に胸(おっぱい)を…
— たられば (@tarareba722) 2016年5月18日
私のツイートでは「男の人の中で」と限定して書いてしまったけど、男女関係なく、歯科衛生士、歯科助手は「エロいことにしてOK!」と勝手に認定しているからこういう記事やツイートを公の場で発信できてしまうのではないだろうか。「エロOK」の烙印を捺しているのは自分なのに、「歯科衛生士、歯科助手に就くということは『エロい目で見てもいいよ♪』と言っているのと同じ!」と錯覚してしまう。だから、ゲス系のサイトやエロ本以外の場所でこういう醜悪な部分を醜悪と思えず露出してしまうのではないかと思った。
私にもそういう部分がないとは言えない。アイドルファンをしていると「こんなことを人間であり少女であるアイドルにぶつけていいのだろうか」と迷うことがある。結局色々と言い訳をして、自分の快楽を優先してしまうこともある。しかし、その迷う気持ち、一歩立ち止まって考える気持ち、醜悪な自分自身の姿は絶対に忘れたくない。(それで免罪されるとは全く思ってない。)
歯科衛生士、歯科助手の方の中には、こういう目線で見られることに慣れていたり楽しめたりする人も、もちろんいる。それは良くないことでは全くない。(本人がそれに悩んだり、本当は嫌だったりしたら良くないけど。)
そして、棚ぼたのようなエロスが大好きな男性(女性)も全然悪くない。そういうことって楽しいよね。私も、そういう記事を書いているときはワクワクして楽しいよ。
だからこそ。エロが大好きだからこそ。そんなこと考えもせず働いている人、胸が当たることに悩んでしまう人、慣れ過ぎてなるべきでない方向に鈍感になってしまった(尊厳を放棄してしまった)人などの存在を忘れずに、思いを馳せてから、今回の記事は発表してほしかった。可能であれば、できるだけそういう人に見えない所で、同じコンテクストを共有している人達の所で発表してほしかった。「歯科衛生士、歯科助手って、こんなにフランクにエロ扱いしていいんだ!」という価値観を、公道に撒き散らさないでほしかった。
今回のことに限らず、例えば最近だと「声かけ写真展」などもそうだけど、もしエロをやりたいなら、エロのフィールドで真面目に楽しくやろうよ。エロのフィールドから外れてやってしまう人は、エロとがっぷり組んで真剣にやっている人達に勝てないから逃げているのかな?と思うこともある。公道に撒き散らしてしまうほどエロが大好きなら、公道じゃなくもっとふさわしい場所で、そのエネルギーをかけてもっともっと磨き上げられた素晴らしいエロスを作れるはずだ。そんな風に、私はみなさんのエロの好きさを信じています。(まあ、磨き上げたくないんだってことなのかもしれないけど、やっぱりそれを公道に出しちゃうのはダサいって思うかな。)