粥日記

A fehér liliomnak is lehet fekete az árnyéka.

1mmだけ前向きな気持ちになってきた、気がする

「電子レンジでチンする」の類語として「オーブンでブンする」という言い方を知った。その人しか使っていないかもしれない。

 

 ここ1ヶ月ほど、東京を離れて暮らしている。もうしばらくこちらにいる予定。その間は仕事もほぼほぼお休みしていて、今後どのように仕事をしていくべきかなあと、ずっと考えている。

 うつ症状によってできなくなったこと、自分のなかで手放したいと思っていることにはしがみつかずに、これまでと違う形のお仕事もしていきたい。いきたいというか、そうしなければ。いままでと同じでは生きていかれないだろうなあという漠然とした予感があり、具体的な道筋や行動はまだ考えついていないけれど、そう思っている。

 

 うつの治療がきっかけか、コロナ禍のせいなのか、虫垂炎の治療と手術のせいか、結婚をして環境が変わったせいなのか、一人でお酒を飲みに行く機会がほとんどない生活をしている。あんなに楽しみだったのに、フェードアウトのような形でやめてしまったからか、最近になって「あれ、いつの間に」と気づくまで違和感なく暮らしていた。

 どうしてそれに気づいたのかというと、「なんか、コミュニケーションをする体力が失われている! そういえば最近、知らない人と話してない!」とハッとしたからだ。挨拶や、困っていそうな人への声掛けくらいはしている。でも、以前はもっと気軽に知らない人と話していたし、そこから得る知識や新しい情報もたくさんあった。いまの自分の世界は、仕事と家族に限定されている。わたしが一生携わらないであろう仕事をしている配偶者から聞く話は毎日とても面白いけど、それだけじゃダメだ……。

 じゃあ、以前の自分はいつどうやって他人とのコミュニケーションを発生させていたのだっけ。思い出せばそれは一人飲みの席だった。それをしなくなった理由と思われるものは最初に書き連ねた。もう少し考えてみると、うつの療養期間に太って容姿に引け目を感じていることや、本が読めなくなったり映像や音声に触れられなくなったことで新しい情報が自分に蓄積されておらず、「他者に提供できる面白い話を持っていない」と思っていることなども、外に出て行かなくなった理由のなかに含まれているようだ。
(かつて、ライター講座で「ライターはお土産(面白い話や企画案)がないくせに飲み会に来るな」と言われたときの恐怖が、いまでも思い出される。)

 また一人でお酒を飲みに行って、たまたま居合わせた方と話したいなあとも思うし、別にお酒が入っていなくても、自分に面白い話がなくても、その場を楽しくお話しして過ごす方法はあるのだから気負わず外に向いていきたいなあと思うようになってきた。実践するにはもう少し時間がかかるかも。それまでに、自分のなかのブロックに気づいて取り除いていけるといいのだけど。

 

最近のお仕事

 11月1日発売、須田亜香里さんのフォトエッセイ『がんこ』(扶桑社)に編集アシスタントとして参加しました。須田さんがSKE48を卒業してから初めて出版する著書です。
 これまでインタビューなどで二度お会いしました。話しぶりはあっけらかんとして聞こえるけれど、発する言葉の奥にまだ言葉になっていない色々な気持ちが渦巻いている人なのだと感じました。その「奥」の部分を、須田さんが懸命に言葉にしてくれたエッセイたち。たくさんの人に読んでもらえますように。

 

『週刊SPA! 2023年 9月12日号』で、俳優の髙橋ひかるさんにインタビューしました。
 10月に上演された舞台『あの夜であえたら』で主演を務めた髙橋さん。作品の舞台にもなっている「ラジオ」を愛する髙橋さんに、ラジオの魅力やいま変わりたい自分自身について聞きました。Kindle Unlimitedでも読めるので、サブスク登録している方はぜひ。

最近読んだ本

 自分が書こうとしているもの、書きたいものがどんなジャンルに属しているのか「定義」をするのが大切だという話があり、その後も著者が「定義」を重視しているとうかがえた。「言葉の実体」という言葉も。広告コピーライターの経歴からそう思うに至ったのかも。わたしも過去の広告制作業の経験から、対象に愛がなければという考えには共感した。

 usaoさんのイラストが大好き。SNS(というかX)では、妊婦や子どもを抱える母親(なぜか母親だけ)に攻撃的な投稿が目に入ることがあって滅入る。思い込みの妊婦像・母親像から離れて、ただ人生の選択のひとつとして子を迎えた人をあたたかく見守りたいと思う。

最近読んでいる本

 読もう読もうと思って読めていなかった本にとりかかる。

 宮崎智之さんが町田康の『しらふで生きる 大酒飲みの決断 (幻冬舎文庫)』をよく紹介している印象があり、それを読んでみようかなと思って検索したとき、こちらの表紙に惹かれてしまったので先に読んでみることに。

 とても好きな最相葉月さんが産婦人科医・教授の増﨑英明さんに「妊娠・出産」とはそもそも、いったい何なのか? を訊く。ミシマ社の「経験していない人はいない。なのに、誰も知らない「赤ん坊になる前」のこと。」というコピーに惹かれて購入して積んでいたものを、ようやく読みはじめた。
 わたしは本は1ページ目から読む派(そう決めているというよりは、そうなってしまう)だけど、この本は気になる章から読んでいる。その読み方も楽しめていて嬉しい。