粥日記

A fehér liliomnak is lehet fekete az árnyéka.

不倫に誘ってくださったあなたたちへ

私を不倫に誘うのはやめてください。
「僕は不倫なんてつもりじゃない。恋人になりたいんだ」という人も多いけれど、そういう独自の解釈の話ではありません。あなたが結婚していて、妻がいるのならば、家庭の外で私と恋愛関係を築こうとしたりセックスをしようとしたりするのは不倫です。

 

私が不倫に誘われて、喜んでいると思っていますか。モテて嬉しいだろうって。
私は、割と嫌なことを言われてもヘラヘラと笑ってしまうし、相手を傷つけないような断り文句を探すのに時間がかかってしまうから、そう思われるのかもしれませんね。

 

ある男性には、私が幼少期に親族の不倫でどれだけつらい思いをしたか話しました。
娘さんがいる男性でした。SNSでも、いつも娘さんとの仲の良い様子をアップしている人でした。
あの可愛い娘さんに、私みたいな悲しい思いをさせる可能性を作りたくないから勘弁してくれとお願いしました。娘さんのことを思って、生まれて初めて他人にその話をしました。でも、その話が終わって駅の近くの横断歩道を渡り切ったとき、あなたは私をホテルに連れて行こうとしましたね。
いまでも忘れられないこどもの頃の傷や屈辱は、他の幼い娘さんを救うこともなく、こんなにあっさりと流されてしまうんだ。自分の経験や存在の無価値さ、無力さに、足もとの横断歩道がガラガラと崩れ落ちたような気持ちになりました。

 

彼らが不倫に手を出そうとできる背景には、やっぱり妻の支えがあると感じます。
下心でパンパンに張って艶めいてさえいる彼らの身体には、オブラートのように家庭のオーラがまとわりついている。彼らが私の前でいくら妻の存在を「無」に近づけようとしても、人生に妻がいなければ私に手を出すことはなかったという現実が、私の自尊心を奪っていく。
妻がひとりでがんばっているにせよ、妻と夫で協力しているにせよ、ちゃんとそれなりに家庭が運営されている。だからこそ、この人はこうやって外で私とセックスしようとすることができる。

 

私は彼らに「家庭の運営メンバー」として選ばれることはなく。それなのに、彼らはそれを、自分の性と恋愛のアウトソーシング先として選ばれることを、妻より良い扱いであるかのように嘘を吐く。
死ぬときに、その後のことを任せたいのは私でなく妻であるくせに。自分や自分の家族が本当に困ったとき、頼るのは妻であるくせに。私の何の後ろ盾にもなってはくれないくせに。
恋愛関係になろうとせず、最初からアウトソーシング先と告げられていたほうがいくらかましだ。嘘を吐かれるよりは。そのときは、性や恋愛をアウトソーシングすると妻に了承を得てきてほしい。嘘吐きのみなさんの言うことは信じられないので、妻に承諾書でも書いてもらって持ってきて。

 

既婚者の恋愛やセックスの相手として白羽の矢が立つということは、本当に屈辱的で、自尊心を奪いに奪われる。でも、断れば一方的にそれまでの関係を遮断されたり、悪者にされたり、腫れもののように扱われたりする。
お仕事の相手だからとすれ違ったときに挨拶をしたら、私なんか元々いなかったみたいに無視されたときは、あなたに心底がっかりしました。仕事の仲間には慕われているようで、何よりです。
カウンターみたいに「キモッ! 死ね!」とか言いたくないんです。普通に仲良く、仲良くなくても良いから楽しくなりたかったんです。

 

そんなことを思っても、これから先も私は「家庭の運営メンバー」でも「リスペクトする仕事仲間」でもなく、「嘘だらけのアウトソーシング先」に選ばれることが多いんだろうと思います。
そういう自分を受け入れられずに、「だったらアウトソーシング先として生きてやるわい」などと思えずに、これからもしばらく悩み続けるのでしょう。そう思うと、このままこのベッドの下が抜けて暗くて寒い地底に沈んで、沈んでいきたいと、虚空に願わざるをえません。