粥日記

A fehér liliomnak is lehet fekete az árnyéka.

「パンツ見せて」男子に必要な「大人の対応」ってなんだろう。

 「悩んで読むか、読んで悩むか」は、朝日新聞の読書面に掲載されているコンテンツ。読者から寄せられた悩み・質問に、様々なジャンルから著名人が登場し、答えてくれる。

その連載の中で、2016年8月7日掲載の「困った男子には「大人」な対応で 壇蜜さん」が話題だ。

 

▼(悩んで読むか、読んで悩むか)困った男子には「大人」な対応で 壇蜜さん

digital.asahi.com

 

12歳の中学生が、「今日のブラジャー何色?」「胸をもませるかパンツを見せて」と毎日声をかけてくる男子にイライラしてしまうと相談している。「嫌だ」と明確にNOを表明しても、おさまらないらしい。
その相談に対して、壇蜜さんはとあるマンガを紹介し、「大人な対応」を提案する(無料会員登録をすると全文が読めます)。

 

壇蜜さんの回答は、「はっきりとNOを示す」以外で考えた場合に相談者側が取れる行動の1つとして、有益ではないとは言い切れない。性的なことは親や教員に相談するのが恥ずかしい場合がある。1人で立ち向かうと決意するならば、今回の提案を実行してみてもいいかもしれない。

ただ、このたった1つの回答しか相談者に手渡されないならば、それは悲しい社会だと思った。もし本当に親にも教員にも相談できず投書した場合、これがこの世の中から12歳の中学生に手渡された唯一の答えになってしまう。
例えば、過去に思春期のこどもたちの相談に答えてきた叶恭子さんや、「スカートめくりは犯罪か?」に回答している弁護士の星野宏明さん性やこどもの問題に詳しい産婦人科医の宋美玄さんらだったら、どんな本を紹介し、回答を用意しただろうか。もっとたくさんの大人の意見を聞いてみたい。

 

また、被害者が「大人の対応」をするための本ではなく、性暴力的な言葉を浴びせてくる男子と一緒に読める本の紹介や、男子に渡して読んでもらうための本の提案もできたのではないだろうか(込み入った話になってしまうが、この男子を「性暴力について教えない社会の被害者」と捉えて救済が必要と見ることもできるのだ)。

性暴力は、被害者がいくら努力し変わっても、加害が続くことがある。「大人の対応」をした場合、加害者に「自分自身の過ちを認めたくない、恥ずかしい」という思いが生まれる。すると、それを誤魔化すために「なに本気にしてんの? お前みたいなブス、相手にするかよ」と、被害者を貶める二次加害が生まれることも想像できるし、実際にある(大人相手でもナンパ被害などでよく見る)。それが、性暴力への対応の難しいところだと思う。

 

12歳の中学生が、どれほどの深刻さで投書をしたのかはわからない。
私の祈りは、壇蜜さんの提案だけがたった1つの方法だとは思わないでほしいということだ。
「大人の対応」は、今起こっている性暴力をやめさせることができる方法の1つかもしれない。だけど、「大人の対応」を覚えることで大切なこども時代をこどもとして過ごせないのは、後々の人生に大きな障害をもたらす可能性がある。大人になってからその障害を乗り越えるのがどれだけ大変か、私は身をもって知っている。

私には、今回の相談内容は「あなたを好きだから困らせたいのよ」などの好意的解釈ができる範疇を超えた暴力に見えた。もし親や教員、養護教諭などを少しでも信頼できるならば、大人を頼ってみてほしい。年齢が近い兄や姉がいるなら、相談ではなく「こういうことがあったんだけど、どう思う?」と意見を聞いてみてもいいだろう。
色々な人に話してみて、意見を聞いて、どんな方法をとるかは自分で選択すること。それが本当の「大人になる」ということだと、私は思う。

 

あなたが守る あなたの心・あなたのからだ

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