秋葉原にある居酒屋「さま田」の角煮カツ丼のことを考えている。
その名の通り、角煮をカツにした丼ぶりだ。そのカツが丼からはみ出るほど大きい。その上に、これまた大きな卵焼きが乗る。みつ葉がざっくりと飾られる。こんなインパクト大なもの、写真を撮らずにはいられない。と思いきや、常連らしき人たちは驚くこともなく、当然のように真ん中に箸を入れ、あるいはカツの端からかぶりつき、丼を平らげていく。
割るか、端から食べるか。選べない。丼ぶりの縁に支えられた均衡を崩すことへの罪悪感がある。もはやずっと見ていたい。そう考えている間にも、ブルンと弾力がありそうな卵焼きから甘く優しい匂いが立ち上ってくる。
と、わたしの記憶はここで途切れている。なんせ最後に食べに行ったのはもう3年ほど前のことだ。もう一度食べに行けば良いのだが、虫垂(大腸の右下)切除の手術を控えた身である。油物は食べないようにと医師から忠告されている。こっそり食べても別に叱られないとは思うけれど、食べたら食べたで虫垂が信じられないくらい痛む。なんの罰なのか? と天に問う。罰ではなく病気である。
虫垂を切除したら、心置きなく食べたいものがたくさんある。もう一度食べたいもの、いつか食べたいと思っていたもの、行きたいと思っていたお店。
手術が終わり体調が安定する日まで、こうして時々わたしが焦がれている食べたいものの話をしていこうと思う。
(2019年撮影)
【さま田公式Instagram】