粥日記

A fehér liliomnak is lehet fekete az árnyéka.

ある男性嫌悪女の告白

私の腕や肩を掴んで乱暴にベッドに押しつけ息を荒くしている男性が、一言声をかけると悪い魔法が解けたように落ち着くのを何度か目撃した。
そういう男性には、追ってお決まりのもう一言をかけてあげると本当によく懐いてくれる。最後には、虚勢を張りたがる高校生みたいなこどもっぽい優しさだけを残して私に抱かれて眠る。

 

怖がっているんだ。よく知らない場所に放り出された動物みたいだ。警戒し、よく吠え、よく暴れる。
動物は意思疎通がたいへんそうだけど、私が相手をする男性は言葉がわかるので良い。最初の一言、次のもう一言、それだけ伝わればあとは思うままだ。
そうやって私は、自分の自尊心と男性への復讐心を満たしている。

 

去年の冬頃、自分を好きにさせることで男性への支配欲を満たすことを覚えた。
「女はセックスすると相手の男を好きになる」と恋愛工学徒をはじめとした男たちは言う。残念ながら、それは女に限らない。ある種の男性もセックスするとすぐに私を好きになる。

「好き、好き」と鳴き、「好きって言って」と懇願する男性を見て、胸の中の支配欲のボールが膨らむのを感じる。「俺のこと好きだよね」。そんなわけないので、ふふふと笑って頭を撫でる。
私が恋愛工学徒を憎く思うのは、半分は被害に遭う女性をなくしたいから。もう半分は同族嫌悪をしているからだ。

 

憎い性を持つ相手が自分の思うように動く。自分を強く求めてくる。それに応じなければ、必死になったり落ち込んだりしてくる。LINEのやり取りやセックスなどの最中に、どんな言葉をかければ相手がどんな風に傷つくか手に取るようにわかる。別にわざわざ余分に傷つけることはないけれど、その状態を作り出せていることに安心する。
もう、男性に傷つけられることが怖いのだ。相手が何をしても私は傷つかないけれど、私が何かをすれば相手は傷つくというパワーバランスでないと安心できない。

 

そうやって男性を支配して、復讐心を満たして死ぬまで生きていくつもりはない。これはリハビリだから。
これでもう十分やったと感じられ、胸の欲望のボールが割れたときに、リハビリは終わると思う。あるいは、もしかしたら、一から十まで信用できる男性と人間関係を結んで、復讐がどうでもよくなることがあるかもしれない。
復讐をはじめて半年以上が経ち、こうして自分の行動と気持ちを文章にできていることが、終わりの兆しにも感じられる。

 

 

最初に話したような男性は、何かきっかけがあって女性と性的な結びつきを持つことを怖がっている。もちろんその自覚はない。彼らは自分が怯えていることを知らないから、彼らの想像上の曖昧な「男らしさ(=乱暴に振る舞うことや、性的な優位さを見せつけることなど)」を体現することで、曖昧に男で在ろうとしている。

だから、そんな男性に最初にかける一言は、あなたはちゃんと男で在るので安心していいんですよと伝える言葉だ。私はあなたが男で在ることをわかっているので大丈夫だよというメッセージ。

次にかける一言は、さらに踏み込む。私の前では男でなくても大丈夫なんですよというメッセージを伝える。男らしいセックスじゃなくても、女をヒーヒー鳴かせなくても、なんなら射精しないセックスだっていい。それらすべてを瞬時に理解してもらうことはもちろんできない。けれど、そういうセックスの可能性もあるということの一抹でも感じてもらうだけで、強張った男性はずいぶん緩んでくれる。(そんなことを伝えると、他の女性とでは上手く射精できなかった人がいっぱい出してくれたりするので、私も達成感があるし支配欲が満たされる。ははは。)

 

2つの「一言」の具体的な文言は、私が復讐を卒業したらどこかに書くかもしれない。
復讐のためだけではなく、男性に対して、あなたのことが大好きだと伝えるためにも使える言葉なので。

 

 

私は私で、バスミルダで在りたいと思っていたのだ。
私に復讐されていると気づかないうちに、私とセックスすることでしがらみや苦しみから解放されてくれている男性たち。私はそのうち彼らを手放すけれど、彼らが次に出会った人とつらくない関係を築けるように祈っている。おそらく、憎しみという情で、私は彼らを愛している。