粥日記

A fehér liliomnak is lehet fekete az árnyéka.

不倫にかかるお金は「遊び」と「本気」で違うのか

●経緯 

 媒体用に取材・執筆をしていた原稿ですが、いろいろな都合により掲載見送りとなったため、編集部の方に許可を得たうえでブログに掲載いたします。取材・執筆の機会をくださり、原稿をご確認くださった編集者さん、編集部のみなさまに感謝申し上げます。

 
 映画『失楽園』やドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』、最近ではドラマ『黄昏流星群』など、不倫を扱った物語は時代に左右され過ぎず一定の人気がある。物語中では、パートナーとのささくれ立った関係、冷え切った関係から逃れ、癒しや本当の愛を叶える理想の人として不倫相手が登場するシーンがよく見られる。しかし実際の不倫は、時間もお金もかかるという現実的な側面も持ち合わせている。いま不倫をしている既婚者は、「不倫とお金」についてどうとらえているのだろうか。

 

「本妻を大切にしたい」男性、不倫にかけるお金は月1万円

 スマートフォンが普及したことで、不倫はずいぶんカジュアルなものになった。現代では、駆け落ちをする勢いで人生を賭けなくても、もっと気楽にパートナー以外の人と不倫関係を結べる。また、働く女性や共働き世帯が増えたことによって、相手の生活費や家賃などをまるまる負担する「お妾さん」スタイルの不倫は減っているようだ。

 俊也さん(仮名、30代後半男性・自営業)は、10歳以上年齢が離れた女性と数ヶ月前から不倫関係を続けている。相手の女性も結婚をしていて、お互いにパートナーと別れるつもりはない。遊びの関係を楽しんでいるという。

 不倫相手の女性との関係でかかる費用は、1ヶ月に1万円のホテル代のみ。ホテルを利用せず、会ってすぐに車で性的接触を持つという場合も多いため出費が抑えられている。「お金をかけてくれない」「車での関係ばかり」だと、女性側が不満を持つのではないかと想像してしまう。トラブル回避のためには、やはり「お互いに遊び」という意志の確実な確認が取れていることが大切だ。

「不倫相手の女性にもっとお金をかけてあげたい気持ちはあります。でも、あまりお金や時間をかけてどちらかがのめり込み過ぎるのは危ない。なので、控えめが良いと考えて現状に落ち着いています。本妻を大切にしたいという思いもあります」(俊也さん)

 俊也さんの年収は1,000万円前後だ。相手との年齢差を考えれば、もっとお金をかけてあげても良さそうだと感じないでもないが、「妻を大切にしたい」「のめり込み過ぎない」という心理的なストッパーが、不倫への出費を最小限に留めさせている。

 

年収200万円台でも、不倫に6万円使う女性

 年収が高くても遊びの関係にはお金をかけないというスタイルがある一方で、年収200万円台でも1回会うごとに約6万円を使っているという人もいる。

 春香さん(仮名、40代女性・会社員)は、30代の既婚男性と交際している。遠距離不倫のため、会えるのは2ヶ月に1回だ。その時間を大切にしたいという思いからか、交通費の他、外食費や宿泊費を合わせて6万円ほどを使っている。

 もちろん給与は全て春香さんの好きに使えるわけではなく、家計として生活に使う割合も大きい。その中で、単純計算で年間36万円を不倫のために捻出している。ただ節約をすれば良いというだけでなく、夫やこどもにわからないようにやりくりをする必要がある。

「いつか不倫相手と結婚したいけど、お互いのこどもを傷つけたくはないので諦めています」(春香さん)

 夫やこどもの目がある中で、神経を使うやりくりをしてでも会うためにお金をかけたいと思える。その原動力となっているのは、「結婚したい」とまで言えるほどの気持ちの大きさによるものかもしれない。

「遠距離なので、交通費がかかるから近くに住みたい」という春香さんの願いが叶う日は来るのだろうか。


お金をかけない「遊び派」、お金をかけたい「本気派」?

 今回、不倫をしている既婚男女11名に取材とアンケートをおこなった。その調査においては、不倫関係にお金をかけないタイプの人は、1ヶ月の不倫出費を5,000~1万円に抑えている。内訳は、そのほとんどがホテル代だ。また、俊也さんのように意識的にお金をかけないようにしている人が多かった。彼らは不倫関係を明確に「遊び」ととらえている。

 遊びだと割り切った不倫相手が3人いる40代女性(年収700万円台)は、不倫をする中で「プレゼントはしない」というルールを決めている。会計も割り勘で、1ヶ月の不倫費用は1万円ほど。彼女は「割り勘すると関係が長く続く」という自分なりの確信に従って、そのルールを守り続けている。

 不倫関係に月3万円以上のお金を使っている人の回答になると「いつか不倫相手と結婚したい」と考えている人の割合が増える。取材対象が11名と少ないので一概には言えないが、不倫の本気度が高いと、かける金額が多くなる傾向がある可能性が考えられる。

「いつか結婚したい」という理由と似ているが「まっとうな関係ではないので、せめて相手に不自由な思いをさせたくない」「相手が大切だから」という思いで、できるだけお金をかけてあげようと心がけている人もいた。遊びの関係で月3万円以上を使うという人もいたが、そのタイプの場合は総じて不倫相手を3人以上抱えていた。

 その他、不倫に月3万円以上使う理由には「自分の方が年上だから」「自分の方が収入が多いから」という、一般的な恋愛のマナーが挙げられた。中には、専業主婦で収入はないものの、年下の不倫相手が4人いるという女性もいる。彼女の今後の希望は「相手が全員年下なので、今は最低でも割り勘にしている。お金のある年下男性と付き合いたい」とのことだ。


5人の不倫相手に月40万円。不倫相手との結婚は「ない」

 遊びの不倫にはお金をかけず、本気の不倫にはお金をかける傾向がありそうだとわかったところで、「自分の不倫相手はお金をかけてくれている!」と喜んでいられるわけではない。

 悠太郎さん(仮名、30代男性・経営者)は、5人の不倫相手がいて月にかけるお金はざっくりと見積もって40万円ほど。40代男性の手取り月収ほどのお金をかけていても、不倫相手との結婚は「ない」と言い切る。

 40万円の内訳は、その月内で会う女性や人数によっても変わる。多いパターンが「食事、お酒、ホテルの1セットで10万円くらい×人数分」だそうだ。その他、イレギュラーで旅行をする場合には相手の分も負担するため、1回30万円ほど支払っている。また、不倫相手の中にクラブやラウンジで働く女性がいる場合には、その女性のノルマ達成などのためにお店で月30万円ほどを使うこともある。

「プレゼントはしない主義で、高価なバッグやアクセサリーを買ってあげることはないので、(不倫をしている)他の人よりは出費が少ないと思います。今以上に不倫相手にお金をかけてあげたいという気持ちは、特にありません」(悠太郎さん)

 悠太郎さんの年収は5,000万円を超える。不倫相手に使うお金も、妻と家庭に対して使うお金も、特に金額の上限は決めていないという。求められたり必要があったりすればその都度検討するものの、基本的には飲食費、交通費、ホテル代ともに「俺が出すよ」という気持ちでいる。

 不倫相手はもちろん、妻に対しても「もっとお金をかけてあげたいという気持ちはない」。それは、自己評価でも女性たちからの評価でも「十分に満たせている/満たされている」という共通の実感があるからだろう。悠太郎さんのような例は、先に述べたような昔の「お妾さん」スタイルに通じるものがある。

 

ルール化、ルールの運用がしやすい「不倫のお金」

 取材の中で、40代女性が「割り勘すると関係が長く続く」と語っていたのが印象的だった。刹那的な感情に左右されず、長く関係を続けたいという目的のためにも「お金」が関わってくる。

 既婚者が不倫をしていて、「配偶者以外の人と婚姻、婚約、内縁関係を持っている場合」や「パートナー以外の人と肉体関係(性交渉や性交類似行為)を持った場合」は不貞行為となる。民法上の不法行為とみなされ、慰謝料や離婚請求の対象となる。それを「リスク」と考えるかどうかは人によるが、もしリスクだと思うのであれば、わざわざ不倫にチャレンジする必要はない。

 それでも不倫に飛び込んでしまった人たちは、部外者からしたら考えなしに見える。しかし今回話を聞いていく中では、不倫をしていても感情に完全に流されたり自棄になったりしているわけではなく、それぞれがルールを作って関係を維持していることがわかった。特に「お金」という量や使用目的の限られたものは、不倫の目的に応じてルール化、ルールの運用がしやすいようだ。

 お金の使い方だけで、不倫相手や不倫しているパートナーの気持ちの全てを量ることはできない。それでも、不倫をしている彼らのお金の使い方で、その人が何に重きを置いているか、どんな価値観で生きているのかを垣間見ることはできるのかもしれない。

(了)

 

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(2019/7/1 12:45 追記)

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