粥日記

A fehér liliomnak is lehet fekete az árnyéka.

SENDAI SOUL COCKTAIL

学生の頃、私は韓国に約1年間の留学をしていた。

留学が終わって帰国して、その後2~3日のうちに病院に運ばれ、虫垂炎でそのまま入院した。入院したのは、あとにもさきにもそれっきりだ。いまのところ。
お医者さんには、留学中に発症してもおかしくなかったと言われた。帰国して気が緩んで、張った風船が割れるように症状が表れたのだろう、とも。

 

数日に渡って点滴を打っていた。そんなことは初めてだったから、その点滴の針が皮膚の奥で折れ、腕がパンパンに腫れて熱を帯びていることもよくわからなかった。連日眠れないほど腕が痛くて痛くて、でも点滴とはそういうものなんだろうと言いきかせて耐えていた。

「我慢しちゃう子なんだねえ。留学先でも、一人で気を張っていたんでしょうねえ」

腕の異常に気付いた看護師さんが、呆れたように笑っててきぱきと針を交換してくれた。痛いときは痛いと言って良いんだよ、と教えてくれた。

 

 

東京に出てきて、いつの間にか6年半が経った。あまり簡単にはお酒に酔わなくなった。
大人になって強くなったか、加減を覚えたのだろう。そう思っていたのに、宮城に帰って友達や先輩たちと飲むと、ものすごく気持ち良く酔っぱらってしまう。もうだいぶ大人なのに、先輩たちにめちゃくちゃに甘えてしまう(もしかしたら、そうは見えないかもしれないけど)。

東京で知り合った年下の子たちは「えりかさんの酔っぱらったところを見たい」と、繰り返し言ってくれる。言葉どおりの意味だけではない。私ともっと仲良くなりたいと思ってくれていて、私にリラックスしていてほしいし、素の姿や本音の部分を見せてほしいと思ってくれているのだとわかる。
わかるのに、なんでそうしてあげられないんだろう。なんで今日も酔えなかったんだろう、と悔しく思いながら電車に乗り込む夜更けもある。 

 

「我慢しちゃう子なんだねえ」
「気を張っていたんでしょうねえ」

看護師さんの声が、耳の奥にかすかに思い出される。


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仙台駅前のコンビニで見つけた、缶のレゲエパンチ。ホテルに戻って、翌日の準備をしながら一人で飲んだ。
普段はお酒を飲んでも朝方まで眠れないでいるのに、アルコール分4%のレゲパンを飲んだら気持ち良くなってすぐに眠ってしまった。つけっぱなしのテレビから、昔からある懐かしいCMの曲が流れていた。