粥日記

A fehér liliomnak is lehet fekete az árnyéka.

磯村勇斗には未来しかない。ファーストパーソナルブック『過現模様』

「未来しかない」

姿だけでそう感じさせてくれる男の子が、アイドルや俳優として世に出てくることがある。
俳優・磯村勇斗もそのひとりだ。

 

磯村勇斗ファーストパーソナルブック 過現模様

 

2016年12月に発売された、磯村勇斗初のパーソナルブック『過現模様』主婦と生活社)。
生まれ育った静岡県沼津でのリラックスしたショットや、自宅やお気に入りの洋服店での少し緊張したちぐはぐな雰囲気の写真などが収録されている。

仮面ライダーゴースト』も見ていたけれど、彼を良いなと思ったのはドラマ『ひよっこ』だった。
アニメ『耳をすませば』では、ヒーローの天沢聖司ではなく杉村。
漫画『溺れるナイフ』では、ヒーローのコウちゃんではなく大友。
「ヒロインはこっちを選べば幸せになれそうなのに」系男子が好きな私が、『ひよっこ』で磯村勇斗演じるヒデを好ましいと思うのは当然だ。竹内涼真が演じる島谷の方がヒーローっぽかったのだ。

しかし、なんとヒデはヒロイン・みね子(有村架純)と結婚した。すごい。
「選ばれてほしい男子が選ばれる」という私の長年の夢が叶った瞬間だった。ありがとう、磯村勇斗さん、岡田惠和さん(『ひよっこ』の脚本家)。

 

パーソナルブック『過現模様』は、2016年の作品。
まだヒデっぽさはなく、どちらかというとゴーストで演じたアランの雰囲気が残っている。

高円寺の古着屋の前で、ピンクの柄シャツとピンクのソックスを履き、あからさまに視線を外してみせる。
沼津仲見世商店街。ベンチに腰掛け「ふと気づいた」という感じでこちらを振り向く。
改まったかっこいい写真で口を尖らせがちなのは、癖だろうか。
決して撮られ慣れていないわけではないだろうに、カメラを意識したその一瞬を切り取られた。それは若い故の素直さであり、かえって彼の写真の良さとなっている。

 

資材置き場に黒シャツ黒スーツで登場した金髪の磯村。
挑発的な表情をしたりアクションを見せたりする、ヤンキー映画的なカットが続く。
その中に、2枚だけ笑顔の磯村がいた。

「大丈夫?」と笑ってこちらの顔を優しく覗き込んでいるようにも見えるが、ケンカして踏み倒した相手を「ばーか」とあざ笑っているようにも見える。
どちらとも受け取れる多面性のある表情を見ていたら、彼はこれからどんな役でも演じられるだろう、と未来を感じた。振れ幅をどんどん広げていける天質を持った人なのだろう、と。

現に、彼はこの後「ヒロインの配偶者」という大役を掴み取る。
ヒロインと結ばれるその役柄について、オファーの際は伝えられていなかったのだそうだ(インタビューより)。
役の人生をそのまま生きてみてほしいと、願いを託されたのではないだろうか。彼の振れ幅の中に、必ず着地点が在ると期待されたのだと思う。

 

パーソナルブックには、磯村のこどもの頃の写真や、4ページに及んで生い立ちを語るインタビューも収録されている。インタビューでは、磯村が「自主製作映画」という自身のターニングポイントをとても大切にしていることがわかる。
今年の11月には出演映画『覆面系ノイズ』の公開が控えているが、この先どんな作品に出演しても、きっと何度もその「自主製作映画」に立ち返って初心を思い出すのではないだろうか。
私もまた、新しく彼の出演作を見るたびに、このパーソナルブックに戻ってきて読み返したいと思う気がする。
磯村勇斗が活躍する未来の中に、そんな自分の姿を感じた。